栄養療法が心の病を治す

栄養療法、オーソモレキュラー療法とは、栄養素を補うことで細胞の分子バランスを整える方法です。通常の栄養学とは異なる量の栄養素を積極投与することで、特定の病状の改善、または根本的な体調改善が達成されます。実際、慢性的な体調不良や原因不明のめまいがこの療法により改善しています。

実はこの方法、心の病にも有効であることはご存知でしょうか。
1950年代の医師、ホッファーは栄養療法で精神疾患が治ると考え、統合失調症の患者にナイアシンを大量投与しました。一見、奇怪な行動に見られますが、統合失調症患者へのナイアシン投与は現在の精神科でも行われています。

統合失調症とは精神病の一種で、主な症状は幻覚、幻聴、妄想です。一方でペラグラという病気はナイアシン欠乏によって生じ、症状としては皮膚症状や体調不良の他に、幻覚や妄想が挙げられます。このペラグラと統合失調症との症状的関連から、統合失調症の治療にはナイアシンが有効であると考えられるようになりました。

ビタミンB群の一種であるナイアシンは、エネルギーの代謝に関係する栄養素になります。2015年に示された日本人の食事摂取基準では、20代男性の1日の摂取量の目安を15mgとしています。上限量は300mgです。これに対し、ホッファーが投与した量は、1日3000から6000mg。現在の精神科でもナイアシンをはじめ、ビタミンB群のサプリを大量投与することで統合失調症を改善する治療があります。サプリメントは多いですが、患者は症状改善により薬の服用を減らすことができ、この治療は一定の効果をあげています。栄養学とは価値観の違う栄養療法。それは心の病にも使われています。